April 11, 2013

アシュケナージ氏邸エントランス

ここ一歩入るだけで
アメリカであることが嘘のようなヨーロッパの空気に包まれる

まだ私が大学に入ったばかりの頃には
ここへレッスンに来ると
前にフェルメールクァルテットがリハーサルをしていたりして
リハーサルはおろかゲネプロさえ人を入れず
また演奏時にはメンバー同士が目も合わせないことで有名な彼らの 
ドア越しに聞こえてくる卓越した静かなリハーサルはとても神秘的で
今でも容易に思い出せる
そういう空気がここにはやっぱり流れていて

畳の上でキャラクターのぬいぐるみや物に囲まれて練習していたり
物や人が和も洋も問わずごちゃ混ぜに溢れ返っている小さな島国では
なかなか創り出せない音がここにはある気がする
もちろん色々な例外はあるけれども
音を出す環境はいつだってとても大事

アシュケナージ氏が読む楽譜は
ほぼすべてが作曲家オリジナルの手書きの譜面で
私がどうしてそうなるのかと問えば
明確な理由と共にその作曲家自身がそう教えてくれているからとう答えが返ってくる
そういう風に当たり前に勉強し勉強し続けること

例えどんな音楽家になろうともきっとそう
学ぶことは永遠にある

初めて彼のレッスンを受けた日
最初に「毎回レッスンを録音して下さい。」と言われた
それを繰り返し聴くことはとても貴方のためになるから、と

日本ではレッスンの録画や録音は禁止している先生方もいると聞
なんでも他の生徒の親御さんや他の先生方に 
それを回し見られたりすることがあるからだそうだ 
それが困るのもわからなくはない 
でもそれは音楽がビジネスであるからで
本物はそんなことをされたぐらいでは減らない
何にも減りはしない
音楽はそんなことでは減らない

彼に会うたびに
音楽に人間としてのまれてしまわないこと
そういうほんとうに大切なことを思ってやまない