アシュケナージ氏邸エントランス
ここへ一歩入るだけで
アメリカであることが嘘のようなヨーロッパの空気に包まれる
まだ私が大学に入ったばかりの頃には
ここへレッスンに来ると
前にフェルメールクァルテットがリハーサルをしていたりして
リハーサルはおろかゲネプロさえ人を入れず
また演奏時にはメンバー同士が目も合わせないことで有名な彼らの
ドア越しに聞こえてくる卓越した静かなリハーサルはとても神秘的で
今でも容易に思い出せる
そういう空気がここにはやっぱり流れていて
畳の上でキャラクターのぬいぐるみや物に囲まれて練習していたり
物や人が和も洋も問わずごちゃ混ぜに溢れ返っている小さな島国では
なかなか創り出せない音がここにはある気がする
もちろん色々な例外はあるけれども
音を出す環境はいつだってとても大事
アシュケナージ氏が読む楽譜は
ほぼすべてが作曲家オリジナルの手書きの譜面で
私がどうしてそうなるのかと問えば
明確な理由と共にその作曲家自身がそう教えてくれているからという答えが返ってくる
そういう風に当たり前に勉強し勉強し続けること
例えどんな音楽家になろうともきっとそう
学ぶことは永遠にある
初めて彼のレッスンを受けた日
最初に「毎回レッスンを録音して下さい。」と言われた
それを繰り返し聴くことはとても貴方のためになるから、と
日本ではレッスンの録画や録音は禁止している先生方もいると聞く
なんでも他の生徒の親御さんや他の先生方に
それを回し見られたりすることがあるからだそうだ
それが困るのもわからなくはない
でもそれは音楽がビジネスであるからで
本物はそんなことをされたぐらいでは減らない
何にも減りはしない
音楽はそんなことでは減らない
彼に会うたびに
音楽に人間としてのまれてしまわないこと
そういうほんとうに大切なことを思ってやまない
April 11, 2013
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